Brand strategy column-ブランド戦略コラム-

ブランディング

これだけ読めば分かる!「リブ ランディング」を丸ごと解説

2019.04.17

最近よく耳にする「リブランディング」という言葉。なんとなく分かるようで分からないという方も多いのではないでしょうか。
ここでは「リブランディング」とは何か、その意味や意義、そしていま何をどうすべきかなど、「リブランディング」について分かりやすく解説いたします。

CONTENTS:

1.リブランディングとは
2.リブランディングを行うタイミングは?最適な時期はいつ?
3.放置は危険!?リブランディングしないとどうなる?
4.リブランディングによる7つのメリット
5.絶対にやってはいけないリブランディング!その注意点とは
6.事例に学ぶリブランディング
7.まとめ〜リブランディングの真の意義

1.リブランディングとは

リブランディングとは、「すでに確立されたブランドを見直して再構築することにより、その魅力をより効果的に発信し、ブランドを更に活性化させること」です。

企業や組織のマーケティング戦略として、今や欠かせない「ブランディング」ですが、ブランドは常に変化していくもので、作ってそれで終わりではありません。ブランドの価値は企業の利益に直結しますので、その価値が下がれば決して看過できない問題となります。
「リブランディング」は、この「ブランディング(Branding)」に「再び」を表す接頭辞の「リ(Re-)」を付けたもので、「ブランド再生」や「ブランドの再構築」という意味で使われています。

ブランドはある意味、我が子のようなものでしっかりと息づいています。一度市場に誕生させたからといって、そのままでいいというわけではありません。きちんと育て成⻑させてあげるには、ちゃんと世話をする必要があります。なぜなら、市場は刻々と変化し続け、顧客心理も時とともに変わっていくからです。つまり、こうした市場や顧客の変化に応じて、ブランドの在り方を見直し、企業や組織の利益最大化を目的に、現況に最適な形に再構築することを「リブランディング」といいます。

2.リブランディングを行うタイミングは?最適な時期はいつ?

リブランディングはいつでも行えるものですが、最大限効果的に行うには始めるタイミングが重要です。適切な時期というものがあるので、逃さないように注意する必要があります。

そこでcheck!
次のうち、当てはまるものにチェックを入れてください。

□売り上げが減少してきている
□社員の危機感が希薄
□トップが交代する
□記念イヤーなど節目の年を迎える
□なかなかいい人材が確保できない


上記に1つでもチェックが入ったら、今すぐに「リブランディング」を考えた方がいいでしょう。それは、今が「リブランディング」を始めるのに「最も適したタイミング」だと言えるからです。
それではそれぞれ詳しくみていきましょう。

1)売上減少のタイミング


売上が減少している場合、その解決策を検討し、すぐに手を打つ必要があります。売上データの分析、環境分析、ブランドイメージ調査などから、売上減少の理由を探っていきます。
ブランドが時代の変化により次世代顧客にとって魅力のない、陳腐なものになってしまっているのかもしれません。そのために新規顧客の獲得ができないのか、または強いライバルの出現で顧客を奪われているのか、そもそも今の市場が合っているのかなど原因を分析、すぐに対策の仮説を立てる必要があります。

【リブランディングのポイント】
・対象市場や顧客を変えたらどうなるのか
・価格は適切か
・デザインやコミュニケーションの在り方を変えたらどうか

2)社員の危機感が希薄


中小企業の業績は、これらの外的要因だけでなく内的要因が大きいこともよくあります。業績が安定していた時期が⻑かったために社員が危機感を持っておらず、イノベーションを嫌がる傾向がある、またはブランドは変えてはいけないと頑なに思い込んでいるために今に至っているということはないでしょうか。
社員は会社という同じ船に乗り合わせている乗組員です。会社の危機は、社員自身の生活にも直結する問題であることを理解してもらい、リブランディングの必要性を自分ゴトとして認識してもらわなければ始まりません。

【リブランディングのポイント】
・全体説明会も並行して行う
・社員を積極的に参加させるシナリオを作る

3)トップ交代のタイミング


社⻑などトップの交代時は、新社⻑の存在感を⽰し求心力を⾼めるタイミングです。これまでの外部環境・内部環境やビジネスモデルを見直してブランドの強化を図ることは、継承したビジネスを新しい時代にフィットさせるためにたいへん重要な業務です。
先代が行ったことを分析して判断を下し、新社⻑が引き継ぐもの、放棄するものを明確化していきます。

【リブランディングのポイント】
・社史を紐解く
・方向性を可視化し、社内・社外に向けて発信する
(※リーダーが変わったことを周囲に認識させることにより、顧客、取引先、社員の三方に
対するブランドイメージを刷新させるため。)

4)節目イヤー


今後50~100 年と続く会社になるために節目を活用します。〇〇周年などの記念イヤーは、少なくとも3 年前からリブランディングの準備を進めます。この目的は、企業の節目のタイミングに備えて社員が準備することで改めて自社の歴史を振り返り、会社に対する意識を再向上させ、ロイヤルティを⾼めることにあります。このような節目の活用で、より強い存在感を地域や業界に対してアピールすることができます。

【リブランディングのポイント】
・準備に時間をかけてロイヤルティを⾼める

5)採用のタイミング


募集してもなかなかいい人材が集まらないのは、募集のPR 力というより企業のブランドイメージの問題かもしれません。暗くて冷たいイメージの企業に人が集まるでしょうか。そんな時には思いきってリブランディングしてイメージを一新するのも1 つの手法です。
例えばある介護事業所の場合、その業種がらどうしても3K のイメージを持たれてしまい、なかなか人材が集まらずに困っていました。そこで思いきってブランドイメージを一新したところ、マイナビ就職EXPO で大入り満員のブースに転じたという実例もあります。

【リブランディングのポイント】
・外部環境、内部環境分析、STP 分析、ペルソナやブランド・アイデンティティを設定した上でのデザイン設計

その他、リブランディングが必要なタイミングは、価格競争に巻き込まれている、企業イメージが古いと感じていて刷新したい、社員モチベーションを上げたい(誇りに思える会社にする)、M&A による統合時などが挙げられます。

3.放置は危険!? リブランディングしないとどうなる?

前述のチェックリストで1つ以上チェックが入っている場合、そのまま放置するのはたいへん危険です!
更なる業績悪化、下降曲線を描くことになり、ついには「リブランディング」しても効果が得られず、完全に打つ手がなくなります。手遅れになる前に、早め早めに検討だけでもしておくことを強くお勧めいたします。
また、上記にチェックが1つも入らず、たとえ数値が安定していても、経営サイドは常に危機感を持つのがビジネスの鉄則!「現状維持は必ず下がる」という認識で、できれば四半期ごとに見直してみる方がいいでしょう。

4.リブランディングによる7つのメリット

どのような企業にもブランドは存在します。そのブランドを見直し、再構築することの意義とは何か、そして企業にとってどのようなメリットがあるのかをみていきましょう。
大きく分けて次の7つのメリットを挙げることができます。

◆既存ブランドの再利用
◆新規顧客の獲得
◆既存の顧客の満足度UP
◆利益の最大化
◆優位なポジショニングへの変更
◆社員のモチベーションの向上
◆採用力の強化


「リブランディング」の最大の特徴でありメリットでもあるのは、既存のブランド資産を利用するので、これまでかけてきた資金や労力が無駄になりません。また、これまでブランドを支持してきてくれてきた顧客にも、一種の愛顧に報いる形となり満足度アップに繋がります。もちろん、利益の最大化が「リブランディング」の最終目的でもあるため、数値の上昇が期待できますし、同時にブランドの「ポジショニング(立ち位置)」を変えて競合を排斥し、言わば「指名買い」状態になることも可能です。これらによりブランド価値は⾼まり、社内も活性化、社員のモチベーションや採用力もグンと上がることになります。

5.絶対にやってはいけないリブランディング!その注意点とは

安易なリブランディングに要注意!

「リブランディング(ブランドの再構築)」と聞いて、みなさんは何をイメージされるでしょうか。ブランドのロゴや商品名、パッケージやブランドコピーの変更が最も分かりやすいでしょう。これらは顧客や消費者から最も見えやすいものだからです。当然効果も大きいですが、それだけにリスクも大きくなります。
見えやすい表面だけを変えるのは、既存の顧客が愛着を持っていた部分を変更することにもつながり反感を買うことになりかねません。安易な変更は、顧客離れを引き起こすリスクが大きいことを知っておくべきでしょう。
せっかくコストをかけて派手に見た目を変えても、打ち上げ花火的に夜空に消えてしまってはまったくの無駄となってしまいます。

大切なことは、「過去のものを否定ではなく肯定する」ところから入ることです。変えなくていいところは変えず、変えるべきところだけを変更します。多くの顧客に認知されたものは極力残しつつ、今の時代にフィットしたものに変化し育てていく、それが正しい「リブランディング」なのです。

6.事例に学ぶリブランディング

元祖ビアテイスト清涼飲料水「ホッピー」は、1970〜1980 年前半に全盛期を迎え、ビールの代替品として大衆的な飲⾷店に集うサラリーマンに⻑く売上を支えられてきました。ブランドとしての認知度は非常に⾼かったものの、若い世代にブランドイメージ調査を行うと、「古臭い」「オヤジの飲みもの」などという悪いイメージを持たれていました。

さまざまなイノベーションを模索し続けた末に、2000 年に特に若い女性を意識したリブランディングを行い、「プリン体ゼロ・低カロリー・低糖質の健康志向飲料」という新しいブランド価値を届ける方向にシフトしたのです。結果、2017 年には売上を39 億円にまで伸
ばし、見事にリブランディングを成功させました。

レトロブーム、飲酒運転の罰則が大幅に強化されノンアルコールビールブームが起きたこと、その“元祖”ともいうべき存在としてホッピーが注目されたことなどの環境要因を味方につけて、ブランドを再構築。ホッピーの業績を5 年間で3 倍にした、まさにリブランディングの成功事例と言えます。

7.まとめ〜リブランディングの真の意義

ブランドは企業にとって大切な資産です。先に述べたように我が子と思っていいでしょう。
複数のブランドがあって、たとえ低迷していたとしても簡単に切り捨てたりするのは逆にイメージが悪くなります。
リブランディングするときは、何をどう変えるか、なぜ変えるのか、会社の歴史や培ってきたそのDNA を考慮した上で、安易に外側(ロゴ、パッケージなどのデザインやコピー)だけを見るのではなく、内部を見つめることが大切です。会社の内部構造や組織の見直しはサービスに直結し、結果商品や顧客と連動することになります。

よく一般的に、「既に確立したブランドの再構築であるリブランディングは、新規ブランドの立ち上げに比べてコストやリソースが少なくて済む」などと言われていますが、実際はとても奥が深くデリケートで、むしろよりハードルが⾼いとも言え、⾼い専門的な技術力を必要とします。それは外側だけでなく、この一般には見えない内部の部分のリブランディング力が必要だからなのです。
これから「リブランディング」を考える方は、そのことを念頭に置いた上でぜひ慎重に進めていっていただければと思います。