第27話 英語の会議で発言するために
2020.10.01
日本で共感される広告を作りたい!
そのためにはどうしたらいいのか。
これは文化の違いだと痛切に感じた。
当時40年ぐらい前はアメリカの広告の多くはデモンストレーションという表現方法であった。
それに対して日本はメタファーの手法が多かった。
デモンストレーションは、商品の優位点や価格の安さをダイレクトに表現するもの。メタファーは、その商品がもたらす利便性や豊かな生活を、消費者にイメージさせるものである。
これは様々な人種によって構成され、明確な証拠を示さねば伝えられない国と、単一民族で感性がほぼ同じで、何も言わなくても分かり合える日本の違いでもあった。日本で共感される広告を作るためには、作り手として、この違いを相手に説明し、わかってもらうしかないと考えた。
それには、英語を理解し自分の意見を相手に伝えるしかない。通訳に頼っていてはタイミングよく意見を言えない。そうだ英語を勉強し、自分の意見を直接相手に伝えよう。
自分の拙い英語でどうしたら伝えることができるか。私なりに方法を考えた。まず聞く力をつける。会議の内容を把握した上で、クリエイティブに関して問題がある場合。ストップをかけ、こう発言する。
「私は、あなたの言っていることを理解しています。」
英語を理解せずに反対していると取られないためだ。「しかしながら」と続け、まず結論を先に簡潔に言う。「賛成です。このポイントは。しかし不賛成ですこのポイントは。」しかし説明がややこしい部分は英語の堪能な営業に助けてもらう。
これは、私が単語の勉強に使った本の作者、長崎玄弥先生の本に書いてあったこと。文章についてだったが参考になった。
日本語発言の特徴
● ややもすると主語や目的語を省いてしまう。
● 一番大切なことを文の最後に持ってくる
英語表現の特徴
● 自分が伝達したい内容の表現を真っ先に書く。
「奇跡の英単語」長崎玄弥著。高校時代から英語をサボっていた私は、まず単語を覚えることから始めた。
朝1時間早くおきて、出社前の1時間みっちり暗記した。通勤途中はFEN(米軍放送)を聞いた。
初めは繋がって一かたまりだった英語が、しばらく続けるうちにだんだんとほぐれて聞こえるようになった。
リチャードハン・スピーチアカデミー。覚えきれないほど色々な英語教室に通った。
しかしこの教室は素晴らしかった。リチャードはまだ30代の若い先生だったが、授業の内容はディベイトや
テーマを決めたプレゼンテーション、童話を一冊覚えてきて話すなど、内容が素晴らしく、
プレゼンしているところをヴィデオで撮ってくれて復習できるようにしてくれた。
30年前だからまだCDの聞き流しもなかった時代。
あと2つ、私を勇気付けたことがある。
一つはヨーロッパのクリエーター達が集まるワークショップに参加した時のこと。アメリカ人やイギリス人は当然正しい英語を話すが、他のスペインやイタリアやフランスの参加者はタリア訛りやフランス訛りの英語を話す。しかも堂々と意見を言う。興奮すると語尾が母国語になってしまうが、全く意に介さない。聞いている周りの人も意に介さない。正しい英語を話すより、自分の考えを発表することの方が大切なのだ。
セミナー。クリエイティブセミナーでは様々な人種が集まり、様々な発音の英語が話された。
日本人はともすると文法や発音を気にするあまり、沈黙を守りがちだが、会議に参加して発言しないことは、
何も考えていないこととみなされるということを後で聞かされた。
もう一つは私が尊敬する方の発言。彼女は英語が堪能であったが、私が自分の能力の低さを嘆くと、こんなことを言った。「どう言う風に話すかでなく、何を話すかが大切。」それはいかに流暢に英語を話しても中身がなければダメだということ。
全くのヨチヨチ英語で発言し始めた会議。周りの人はどんなにビクビクしたことか。ただ会が重なるにつれ、クライアントから「KOIKEはどう思う?」と言葉をかけられることが多くなった。
ただし私の英語は仕事がらみの会議の席だけ。社交的な英語は全く苦手で、会食の席ではもっぱら沈黙を守った。
そんなこんなで、私なりに日本人が共感すると思う広告ができるようになった。その話は次に。