Brand strategy column-ブランド戦略コラム-

ブランディング

ペルソナは本当に必要なの?意外に知らないペルソナ設定の本質!

2019.06.20

「ペルソナ」や「ペルソナマーケティング」という⾔葉は、マーケティング業界ではよく使われる用語ですが、最近では一般にも広く使われるようになりました。
しかしながら意外に正しく理解されていないことも多いようです。

「何となく分かるけど実はよく知らない」「ペルソナって本当に必要なの︖」と思われている方も少なくないのではないでしょうか。

そこで、「ペルソナ」の基礎知識やその必要性、また注意して欲しい落とし⽳など、「ペルソナ設定の本質」を解説させていただきます。

実際に担当した事例を紹介しながら、分かりやすくお伝えいたしますね。

CONTENTS:

1.ペルソナとは
2.なぜ「ペルソナ」が必要なの︖
3.ペルソナを設定するメリットとは
4.ペルソナを設定する際の注意点︕
5.ペルソナの設定方法
6.ペルソナの実践事例

1.ペルソナとは

「ペルソナ」とは、ラテン語の「persona」に由来する⾔葉で、古典劇における「仮⾯」や⼼理学用語で⼈間の「外的な側⾯」を表す⾔葉でした。

現在ではマーケティング用語として、企業や商品の典型的なターゲットとなる「顧客像」の意味で使われています。
商品やサービスを利用する「最も重要で象徴的な⼈物モデル」と理解すると分かりやすいでしょう。

年齢や性別、職業などによって顧客層を設定する「ターゲット」と似ていますが、「ペルソナ」はより具体的に個⼈をイメージし、年齢や性別、職業はもちろん、氏名や居住地、性格や趣味嗜好、価値観、ライフスタイル、身体的特徴まで、深く堀下げて設定します。

2.なぜ「ペルソナ」が必要なの?

まずは、以下のようなお悩みはありませんか︖

□顧客のニーズや課題が分からない
□商品やサービスが顧客に刺さらない
□広告を出しても商品を認知してもらえない
□開発プロジェクトの効率が悪い
□接客フローがまとまらない


上記のようなお悩みは、何れも「ターゲットの絞り込みに問題がある」ことが原因かもしれません。これらは「ペルソナを設定する」ことにより、問題が解決する可能性は大きいですね。
それでは「ペルソナを設定」すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

3.ペルソナを設定するメリットとは

【メリット1】顧客が何を求めているかがピンポイントで分かる
ペルソナを設定することで、その⼈物のライフスタイルがイメージしやすくなり、具体的な顧客のニーズや抱えている課題が理解できるようになります。
どのような商品・サービスが求められていて、どのような表現が共感を呼ぶのかが格段に分かりやすくなります。
また、そのペルソナが好むような媒体に絞り込んで広告が出せるので、広告費を無駄に使うことがなく、コストカットにもなります。

【メリット2】顧客視点で議論や意思決定ができるようになる
商品開発やサービスメニューの構築、接客フローの⾒直し等を⾏う際、ペルソナを通して思考することで「自社にとってどうか」という視点から、「顧客にとってどうか」という視点に焦点が当たるようになります。
製作サイドの好みや都合ではなく、顧客目線で、顧客の気持ちに沿った視点となりますから、より市場のニーズにマッチした判断ができるようになります。

【メリット3】メンバー間での認識のズレを防ぎ、業務を効率化する
業務に携わるメンバー全員の顧客イメージをすり合わせるのは非常に難しいものです。
例えば「都内在住の30 代未婚⼥性」と設定しても、メンバーが個々にターゲットのライフスタイルや考え方を想像していては必ずズレが生じます。
そこでペルソナを設定することで、メンバー間で「共通した顧客モデル」を持つことができ、迷ったり悩んだりしたときにも共通の軸で判断することができます。
商品開発やプロジェクトの方針も明確化され、バラバラで収拾のつかなかった意⾒の方向性を絞ることができますから、時間やコストカットにも繋がります。

4.ペルソナを設定する際の注意点!

ペルソナを設定するメリットはお分かりいただけたかと思いますが、ペルソナ設定において重要なポイントは「リアルな実感」です。

リサーチ不⾜や客観的な視点が⽋けたまま設定すると、中身の薄いペルソナや、思い込みや理想を投影した自社にとって都合のいいペルソナ像を描いてしまいかねません。それは却って不必要なターゲットに絞られてしまうリスクが生じ、まったくの逆効果になるので注意が必要です。

【やってはいけないペルソナ設定︕】
・思い込みや先入観で設定しない
・顧客データがまだ不⼗分なうちは設定しない
・関係メンバー全員が共通のイメージを持てない
・情報を盛り込み過ぎない

自分たちの思い込みや都合のいいペルソナを設定してしまうと、大きなズレが生じて逆効果になることは先に述べました。
同様に、まだ事業をスタートしたばかりで、どういう顧客が来るかも分からない未知の段階ではペルソナの設定は難しいでしょう。

ペルソナ設定の際には、思い込みになっていないか︖
大量の情報をペルソナに盛り込み過ぎて散漫になっていないか︖
あるいは情報不⾜はないか︖
をチェックしましょう。

ペルソナ設定後は、「自社のブランド戦略に沿っているか」「顧客接点を持つ現場のスタッフに違和感はないか」等のポイントで検証をかけブラッシュアップしましょう。

5.ペルソナの設定方法

それではさっそくペルソナを設定してみましょう︕

ペルソナの設定項目は、名前・年齢・性別などの基本情報に加え、サービス利用や商品購入の意思決定に影響を与えそうな項目を挙げていきます。
更に、どんな悩みがあるのか、何にストレスを感じているのか、好きなものは何か、興味・関⼼を寄せていることなどを考え、ストーリーを構築していきます。

大事なことは顧客との接点を持つ現場のスタッフからヒアリングを⾏うなどして、実在する顧客を参考に、より精度の⾼いペルソナを設定することです。
購入に⾄るまでの動機や意思決定を阻む要因なども描けるとさらに具体的になります。

ペルソナはビジネスモデルによって複数設定する場合もありますから、必ずしも一⼈に絞らないといけないということではありません。またBtoC だけではなく、BtoB においてもペルソナの設定は非常に有効です。

6.ペルソナの実践事例

ペルソナのストーリーをどこまで詳細に設定するかは、業界の商習慣や各企業のビジネスモデルによって様々です。
自社のビジネスにフィットするペルソナをどう設定するかは実践経験が必要なところです。

ここではオレンジフリーでブランディングサポートを⾏ったプロジェクトのペルソナ設定とその戦略を一例としてご紹介します。


【CASE1】自然派素材のケーキショップのペルソナ

・秋本しずく 28 歳(⼥性)既婚/夫婦+⼦1 ⼈(2 歳の⼥の⼦)
・大阪府堺市在住の専業主婦 世帯年収400 万 ・移動⼿段は⾞
・情報収集︓ネット・SNS・友⼈口コミ

〈ストーリー〉
5 年間のOL 生活を終えて幸せな家庭生活を送る、2 歳の⼥の⼦を持つ1 児のママ。
⼦どもの成⻑を⾒守り、育児を楽しみつつも、社会から取り残されている感もあり、少し自由のきかない環境にもどかしさを感じている。
トレンドのものや、おしゃれなお店がないかをSNS や日々の買い物の中で探してしまう。買い物帰りにケーキ屋さんに寄って新しいスイーツが出ていないかをチェックするのが最近の楽しみ。可愛くてインスタ映えするスイーツを⾒つけるとつい買ってしまう。カワイイ写真が撮れたらどこか幸せな気持ちになれる。
お料理やお菓⼦作りも大好きでおいしいものに目がないが、⼦どもが生まれてからは健康や体に良いものを意識することが多くなり、お菓⼦や⾷材の原材料チェックは⽋かさないようになった…。
(この他に幸せを感じること、不満なことなども設定)
↓↓
【実際に⾏った戦略】
このケーキショップは多数の店舗展開をしていたので、店舗ごと、時間帯ごとにペルソナを定めました。それぞれのペルソナにフィットする声かけをスタッフ間でMTGをし、より良い接客に活かしました。
例えば、夜の会社帰りのサラリーマンのお客さまに対しては、テキパキした素早い対応を⾏うようにし、逆にお昼のお客さまにはゆったりした対応をするようになりました。
ペルソナにより顧客理解が深まることで、新作ケーキや試⾷会などのイベント企画に有効に繋がりました。

【CASE2】豊中市のペルソナ

豊中市のブランド戦略策定委員として戦略構築のサポートを⾏ったところ、このプロジェクトでは9 タイプのペルソナ(9 タイプの市⺠)を設定。
これらのペルソナを設定することで、市としてどのような戦略が考えられるのか、この中から一部をセレクトしてご紹介します。

〈タイプ02〉仕事を⼤切にしている⼈

豊中での居住歴は優に10 年を超える。大阪市内の職場へ通う。仕事はとても忙しく、仕事中⼼の毎日であるが、⼦どもたちも成⻑し、⼦育てに⼿がかからなくなり、
休日には音楽鑑賞を楽しんだりもしている。豊中には音楽を始めとする文化的なイベントが多く、おいしい⾷事を堪能できる⾏きつけのお店もある。落ち着いて暮らすことのできる豊中市に、これからも住み続けたいと考えている。
↓↓
【打ち出した戦略】
・芸術家イベントなどの充実
・「音楽あふれるまち・豊中」の充実
・他都市との文化・スポーツ・産業・観光を通した相互交流の促進
・スポーツに親しむ環境の充実
・音楽イベント情報の積極的な発信他


〈タイプ06〉アクティブシニア

仕事からも離れ、自分の時間を多く持つことができるようになった。豊中には⻑く住んでいるので愛着があるものの、これまでに地域とのつながりもあまりなく、地域の状況もわからない。医療・福祉⾯においては安⼼感があるので、今後も豊中に住み続けたいと思っている。これからの暮らし方として、何か自分にできることを始めて、充実した日々にしたいと思っている。
↓↓
【打ち出した戦略】
・ソーシャル系市⺠大学の開校
・まちづくりや生きがい就労など多様な活動への参加の機会の充実
・⾼齢期も安⼼して暮らせる住環境づくり
・市⺠活動情報サロン機能の充実
・⾼齢期に向けての生活設計に関する情報提供の充実他

※他にも「自分のライフスタイルを大切にしている⼈」「⼦育てに奮闘中の⼈」「大阪転勤が決まった⼈」等を作成しました。

ペルソナは一度設定すれば終わりではなく、定期的な⾒直しが必要です。

トレンドの移り変わりや顧客のライフスタイル、趣味嗜好の変化等に合わせてペルソナも進化させていくことが重要になります。
ペルソナ設定の必要性を感じたら、まずはその扉を叩いてみることから始めてみてはいかがでしょうか。



(株式会社オレンジフリー代表取締役/ブランド戦略コンサルタント 吉田 ともこ)